スウェーデンボルグの手紙      
              ──ダルムシュタット伯爵宛──
─前略─   貴簡に対するご返事は「真の基督教」と題する拙著が出版社から届けられますまで、延ばして居りました。同書二部は、当市よりドイツに向かって毎日出ている駅伝馬車にて閣下に宛ててお送りいたしました。拙著「天界の秘義」は既に売切れ、オランダにても英国にても入手出来なくなって居りますが、スウェーデンには若干あることを知って居りますから、是を所持している人々に手紙を送り、売る意志があるかどうか訪ねましょう。ご返事は回答を受け次第、閣下にいたします。
 私が如何にして天使や霊達と交際出来るようになったか、この特権を他の者に移譲することが出来るものかどうか、とのご芳書によるご質問に対し、いかお答えいたします。
 救い主なる主は、世に再び来たり給うて新教会を設立し給うことを予告し給いました。主はこの予言を、黙示録21、22の両章並びに、福音書の数ヵ所に与えてい給います。しかしながら、主は子の世界に身自ずから再び来たり給うことは出来ませんから、主はこの事を、新教会の教理を理解する許りでなく、それを著作出版することが出来る一人の人物を用いて成さねばなりませんでした。そして主は、この職のために私を、幼少期より準備し給いましたので、ご自身を親しく僕なる私の前に顕し給い、この職を満たすべく私を遣わし給いました。これは1743年になされました。その後主は私の霊眼を開き給い、私を霊界に導き入れ、天界とその多くの奇異や地獄を視ることを許し、また、天使や霊達と語ることを許し給いました。しかもこの事は27年も続けられています。私はこの事を事実であることを真実を以て公言するものであります。私に関するこの恵みは、前記の新教会の為にのみなされたことでありまして、教理は私の諸著作に含まれております。
 霊や天使達と語り合う賜物は、主御自身がその人の霊眼を開き給わなければ、他の者に移譲することは出来ません。時には、一つの霊が一人の人に入って、ある真理を彼に知らせることが許されることがありますが、口と口を以て霊と語ることは許されません。それは非常に危険なことでさえあります。何となれば。霊は、天的愛の情動には一致しない人の自我愛の情動に這入るからであります。 
 霊に苦しめられるかの人に関しては、それは彼が瞑想に耽ってきた結果であることを天界で学びました。しかしそれにも拘らず、主がを彼を守ってい給いますから、彼が霊に憑かれているのは危険でないことも知りました。彼が癒されるための唯一の道は、彼を回心させ、彼を助け給うよう、救い主たるイエス・キリストの憐憫を求めることだけであります。   
  1771年、アムステルダムにて
                      エマヌエル・スウェーデンボルグ
  ヘッセ・ダルムシュタット伯爵殿